会社法改正中間試案(社外取締役義務付け)

恥ずかしながらまだちゃんと読み込みできていないのですが、巷で話題の中間試案、昨年12月14日からパブコメ募集がされていますね。


http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080089&Mode=0
 ・会社法制の見直しに関する中間試案
 ・会社法制の見直しに関する中間試案の補足説明


社外取締役の義務付け等が話題です。


今年の1月18日に日弁連が出した意見書(http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/opinion_120118.pdf)には、社外取締役の中に一人以上の法律専門家(もちろん、弁護士がメイン)を選任するよう義務付けよとの記載があり、


 お手盛りじゃないか!


との批判も見られるところです(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20120126/1327860936)。


お手盛り」というのは、うまいこと平易な言い換えが思い浮かばなかったのでググってみると、「偉い人がみずから飯をよそう場合、いくら無茶に盛っても、誰も止められない状態をいう。転じて、外部からの制御が届かない自分のテリトリーで、思うままに自己の利益を図ることをいう」そうです(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AA%BC%EA%C0%B9%A4%EA)。「我田引水」ともいえます*1


この定義からすると、会社法改正は日弁連にとって「外部からの制御が届かない自分のテリトリー」ではないので(国会議員が、国会議員を社外取締役にすることを義務付けよと主張したらまさにお手盛りだと思いますが)、厳密には「お手盛り」とは言えないんじゃないかという気もします。しかし、日弁連が主張しているのは要するに「弁護士を社外取締役にせよ!」ということなので、オリンパス事件諸々にかこつけて弁護士の利益(職域)確保をしたいだけちゃうんかい、と突っ込まれると、なかなか痛いところなのは確かかと思われます。


個人的には、お飾りでなく本気で社外取締役の職責を果たして会社のガバナンスに貢献するにはけっこう大変な時間・労力が必要だろうと思うので、法律専門家を義務付けて大丈夫なのかなーと思ったりもします。なにしろ、上場会社だけでも1月31日現在で3700社位あるらしいですし(http://homepage2.nifty.com/com-l/colisting.htm)。


法律で義務付けられたけど余計なコストは払いたくないので、司法修習出たての弁護士を安くで雇ってとりあえず名前だけ社外取締役に据える、と言うような事態が頻発するようだとあんまりガバナンス強化につながらないでしょう。
結局一部の弁護士(今の制度でも社外取締役をされているようなその道の専門家)が兼任しまくることになり、かえって彼らの効率も落ちて全体のガバナンスが悪くなる、みたいな事態になりかねないようにも思われます。


ただ、一名は必ず法律専門家とする、との案は置くとしても、もし社外取締役の義務付けが取り入れられれば弁護士への社外取締役就任の需要は増えるだろうとは思われますので、弁護士側でもその需要に対応できるような体制(研修・勉強会等による専門家の育成)を整え、ガバナンスの強化に貢献して、さらに需要を高めるという循環ができるといいのかなと思います。

*1:司法試験の勉強をしていると、取締役の役員報酬を取締役会で決めさせると「お手盛り」の危険があるから株主総会による規律が必要だよね、という文脈でよく出てきます。