弁護士のプロボノ活動

日経新聞(2月27日)より

http://www.nikkei.com/access/article/g=96959996889DE1EBE3E2E1EBE6E2E0E7E2E0E0E2E3E0869198E2E2E2
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企業法務弁護士のプロボノ活動についての記事。

Wikipedia
プロボノとはラテン語で「公共善のために」を意味するpro bono publicoの略で、最初は弁護士など法律に携わる職業の人々が無報酬で行う、ボランティアの公益事業あるいは公益の法律家活動を指した。弁護士による無料法律相談、無料弁護活動などが含まれる。現在も弁護士の業界において、もっとも浸透している。

なお、日本の場合、弁護士は、弁護士会を通じて、市民相談や国選弁護、委員会活動等の公益活動が義務化されています。ここでは、「プロボノ活動」はより広い意味での弁護士による社会貢献活動全般を指し、「公益活動」は弁護士会の義務としての活動を指す形で使います。



日経の記事では、アメリカ系のオメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所の弁護士がプロボノ活動として無報酬で手伝った「セキュリテ被災地応援ファンド」の例等、日本におけるプロボノ活動の紹介がされていました。


この法律事務所は、企業法務系の事務所ではありますが、所属弁護士に積極的にプロボノ活動に携わることを促す仕組みがあるようです(無報酬の作業であっても、事務所内の専門委員会の認定により通常の業務として扱われる(=給料が支払われる*1)仕組み)。


一般に、日本の法律事務所では、個々の所属弁護士(特にアソシエイト)が自発的に業務外の時間にプロボノ活動を行うことはあるにしても、事務所側(経営者であるパートナー側)が、弁護士会の義務である公益活動を超えて、アソシエイトに対して積極的にプロボノ活動をするよう促すことはあまりないものと思われます。


もちろん、経営者であるパートナー側からすれば、事務所の売り上げにならないプロボノ活動をすることを促すインセンティブは無いので、当たり前といえば当たり前です。


他方、例えばアメリカでは、弁護士事務所の評価ランキング等において、所属弁護士のプロボノ活動の実績も評価の対象になるため、事務所側もアソシエイトに対し、(無制限ではないですが)積極的にプロボノ活動への参加を促しています。


日本の場合は、弁護士会を通じての公益活動があるので一定程度は公益活動の需要は満たされているとは思うのですが、企業法務系の弁護士が、より自分の専門分野を生かした形で柔軟にプロボノ活動に従事できるようにするには、公益活動を義務として課すという形だけではなく、こういった活動を外部から評価する仕組みがあってもよいのかなと思います。


私が日本で周囲の企業法務系法律事務所に勤める若手弁護士等から聞いたところでは、特に震災後、プロボノ活動に興味を持っている人は多いものの、事務所の通常業務で手一杯でなかなかそこまで手が回らなかったり、プライベートな時間を使ってやるにしても、限界があるケースが多いようです。もしプロボノ活動の実績を外部から評価する仕組みがあり、一定の範囲で通常業務と同様に認められることになれば、従前よりも積極的にプロボノ活動に取り組みたいと考えている弁護士は多いように思われます。


ただし、法律事務所のクライアントから見たとき、法律事務所が積極的にプロボノ活動に取り組んでいることがどのように映るのか、ということへの意識も必要です。まず第一には、クライアントから頂いた仕事に一つ一つ丁寧に取り組むことが、弁護士としてのあるべき姿だと思いますし、広い意味での社会貢献(社会を良くすること)にも繋がると思います。したがって、「あの法律事務所はプロボノ活動ばっかりやってうちの仕事をほったらかしているな」と思われるようでは本末転倒です。


きちんと通常業務を行いつつ、質の高いプロボノ活動をするというバランスが大切だと思われますし、またこういったバランス込みで法律事務所・弁護士を評価する仕組みが必要なのではないかと思われます。

*1:この「給料が支払われる」というところは、私の勝手な推測です