ある新司法試験合格者のブログについて

私が普段拝読させて頂いている弁護士業界の方のブログ界隈で、とある今年の新司法試験合格者(都内の渉外系の大手法律事務所の内定者のようです)が、司法修習制度や刑事訴訟をないがしろにするような記事(例えば、「ただ、司法修習に向けて勉強は一切していません。どーせ刑事訴訟なんてやらないし、民事訴訟知財しかやらないだろうし・・・。ただで1年も拘束されて、生涯年収を減らされて、司法修習制度はマジで渉外弁護士にとっては懐疑的な制度としか言いようがない。」)を書いていたということで話題になっているようです(当該合格者へのリンクはあえて貼りません)。


http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-fcc6.html
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20111003
http://blog.livedoor.jp/schulze/




どうも、諸先輩方のブログの中では、この合格者の考え方が偏っていることが、法科大学院での教育のせいである」とか、「大手法律事務所の目は節穴だからこういう人材をとるんだ」とか、果ては「大手法律事務所の歪んだ考え方に接してこういう考え方になったのだ」という論調で、ちょっと悲しい気持ちになりましたので、私のような新米のペーペーが何かを言うのもおこがましいとは思いますが、少しだけ独り言。



私は比較的大規模でどちらかというといわゆる渉外系に属する事務所に勤務していますが、所属している他の弁護士や同じような事務所にいった弁護士をみても、こういう考え方は大勢ではないと思います(色んな考え方の人がいるので、皆無かはわかりませんが)。


司法修習について言えば、司法修習時代に地方での生活等を楽しんだという人もたくさんいますが、これは別に大規模な事務所や渉外系の法律事務所に入る人に限ったことではないと思いますし(また楽しみながら勉強も両立すればいいことですし)、むしろ自分が修習をしていたときは、大手等に内定していたけど司法修習時代も勉強を頑張って裁判官や検察官等と進路を悩む方も多かったと記憶しています。


刑事事件についても、(普段から刑事をたくさんやっているということは無いですが)国選等でいざ刑事事件をやるとなれば、報酬額にかかわらず非常に一生懸命やっている人も多いです。今入所してきているのは司法修習が貸与制の世代ではないですが、給付制か貸与制かで、そんなに変わるものではないだろうと思います(件の合格者は、司法修習のせいで生涯年収が減るとか愚痴を言っているようですが、司法修習生の段階で生涯年収を云々している人は見た事が無かったです)。


また、法科大学院制度が悪いといった論調もあるようですが、そもそもこの合格者はブログを見る限り200番台後半での合格のようですので旧制度の下でも受かっていたわけですし、またこの合格者はロースクールはものすごく嫌だったというような事を書いていますので、あまり法科大学院制度は関係無く、この人個人の考え方の問題なのではないかと思います。


大規模な事務所や渉外系の法律事務所の採用についていえば、採用する立場に無いので正確にはわかりませんが、この合格者が就職活動の際に「司法修習制度は無駄で刑事訴訟をやるような人種はクソだ!」といったようなことをわざわざ言っていたわけではないでしょうし(むしろこういうタイプはきっと面接等は無難にこなすのだろうなと想像できますし)、面接で人柄全てを把握するのも難しく、また相対的に他より多い人数を採用する以上、中には「変な人」を採ってしまうことがあるにしても、「こういう人を採るということは大規模事務所なこういう人ばかりだ」と言われるのはちょっと心外だろうなと思います。



もちろん批判は謙虚に受けとめて直すべきところは直すことが必要だと思いますが、なんだか偏見なんじゃないかと思う点もありましたので、ちょっとだけ。


まあそもそも、件のブログを書いた合格者は、自分の代から貸与制になったので普段仲間内で愚痴っているようなことを軽い気持ちで書いたのではないかと推察しますが、わざわざ偏見を助長するようなことを書くのもちょっとどうかと思います。