アメリカのローファームと日本の法律事務所の違い②(組織と経営)

需要があるのかわからないままに、この間(http://d.hatena.ne.jp/shinmai-lawyer/20120105/1325718795)の続きで、アメリカと日本の法律事務所(主に中規模〜大規模、企業法務系)の違いで私が気づいたことについて。



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私が今働いている事務所は、人数的には世界的に見て最大手というわけではない、パートナーシップの事務所なのですが(つまり世界のあらゆる主要都市に支部があって、何千人もの弁護士が働いている事務所ではない)、それでも、弁護士資格を持っていない、経営専門のポジションがあります(例えば企業でいうCEOとかCOOのような立場。事務周りを統括するいわゆる事務長や経理ではなく、経営職です)。また、マーケティング専門のポジションもあります。*1


もちろん、それとは別に、弁護士資格をもって、弁護士として事務所を代表する、代表パートナーもいます。


日本の中規模〜大手法律事務所の場合は、弁護士資格をもったパートナーだけで事務所を経営している場合がほとんどではないでしょうか(とある比較的規模の大きい事務所で、弁護士資格を持っていない営業専門職(いわゆる「営業部長」)の方がいらっしゃるのを知っていますが、割と特殊な例なのではないかと思われます)。


日本の法律事務所は、中規模〜大手といっても、今のような規模の拡大が進んだのはせいぜいここ10年程のことですし、最大手でも弁護士数500名いかないくらいですので、組織としては、より小規模な法律事務所とそれ程は変わらない(個々の弁護士の裁量が多く、個性が前面に出る割合いが強い)場合が多いように思われます。


組織という意味では、上記のように経営やマーケティングと言った機能を非弁護士の専門家に任せる等、アメリカの中規模〜大手のローファームのほうが成熟しているのかなという印象を受けます(どちらが良い悪いということではないですが)。また、より「経営」という観点に力点を置いており、その意味では企業に近いのかも知れません(ただし、別の機会に書きたいと思いますが、プロボノ活動(公益活動)をきちんとやり、それが評価される風土も根付いています)。


日本では、やはり基本的には日本法しかアドバイスできないという縛りがありますので、所属弁護士を何千人にも増やして世界展開するというのは考えにくいとは思います。したがって、現状、組織を成熟させる必然性はあまり無いのかも知れません。


しかし、法曹人口が増加して競争が厳しくなるなかで、従来より「経営」や「営業」といった観点を意識しなければならないようになる(なっている)のかなとは思います。広くテレビ等での広告をうったり、全国に支店を出す事務所、弁護士バー*2、回転寿司を経営する事務所*3(これは驚きましたが!)等の登場や、弁護士事務所専門の経営コンサルタントの方が現れたりしているのは、その兆候なのでしょうか。




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*1:ただし、このように弁護士資格を持たない経営専門職等を置くのがアメリカのローファームで一般的なのかどうかは、よくわかりません

*2:http://r.tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13109316/

*3:http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/company/cmi3143952001/